ゴールデンウィーク前後になると、ホームセンターの園芸コーナーは大量の夏野菜の苗で埋め尽くされます。 ずらりと並ぶ緑色のポット。
「『アイコ』の苗、あったあった!……でも、こんなにたくさんある中から、どれを選べばいいの?」
そう悩んで、なんとなく手前の取りやすい苗をカゴに入れたり、「一番背が高いから元気だろう」と安易に選んだりしていませんか?
ちょっと待ってください!その選び方、危険です。
実は、プロの農家さんは「苗半作(なえはんさく)」と言って、「苗の出来で、収穫の半分が決まる」と考えるほど苗選びを重要視しています。
悪い苗を選んでしまうと、どんなに良い土や肥料を使っても、挽回するのは至難の業。
逆に「良い苗」を選べれば、その後の管理が驚くほど楽になり、鈴なりのトマトが約束されたようなものです。
今回は、売り場で迷わず「これだ!」と自信を持って最高の苗を連れて帰るための、苗選びの極意を伝授します。 記事の最後には、売り場で使える「目利きチェックリスト」も用意しましたので、ぜひ活用してくださいね。
【鉄則】なぜ「一番花(いちばんか)」が咲いている苗でないとダメなのか?

苗選びで最も重要なこと。それは、「一番花(最初に咲く花)」が咲いているか、少なくとも蕾(つぼみ)が大きく膨らんで黄色くなっている苗を選ぶことです。
これは単に「成長が早いから良い」という単純な話ではありません。トマトの「やる気スイッチ」に関わる、非常に重大な問題なのです。
トマトの2つの成長モード
トマトには、大きく分けて2種類の成長モードがあります。
- 栄養成長(えいようせいちょう): 茎や葉を茂らせて、自分の体を大きくするモード。
- 生殖成長(せいしょくせいちょう): 花を咲かせて、実(子孫)を作るモード。
トマトという植物は、最初の花(一番花)が咲いて実がつくと、「あ、そろそろ子孫を残す(実を作る)時期なんだな」とスイッチが切り替わり、体作りと実作りのバランスを上手にとるようになります。
「花なし苗」を植えるとどうなる?
では、まだ花が咲いていない若い苗を、栄養たっぷりの広いプランターにいきなり植えるとどうなるでしょうか?
トマトは「ここは広くて栄養も満点だ! 苦労して子孫を残すより、もっと自分の体を大きくしよう!」と勘違いしてしまいます。
その結果、茎や葉ばかりが異常に茂る「栄養成長」に偏ってしまい、肝心の実が全くつかない状態になります。これを専門用語で「木ボケ(つるボケ)」と言います。
こうなると、背丈ばかり伸びてジャングルのようになるのに、花が咲かなかったり、咲いてもボロボロ落ちてしまったりします。
だからこそ、「花が咲いている苗(=実を作るスイッチが既に入った苗)」を選ぶことが、失敗しないための絶対条件なのです。
良い苗を見抜く「3つの目利きポイント」

一番花が咲いている苗を見つけたら、次はその中から「健康優良児」を選抜します。見るべきポイントは3つだけです。
ポイント1: 茎の太さと「節間(せっかん)」
まずは茎を見てください。
- 太さ: 地際の茎が「鉛筆くらいの太さ」があるものが理想です。ひょろひょろと細い苗は、風にも弱く体力不足です。
- 節間: 葉と葉の間(節間)が、間延びせずに「ギュッと詰まっている」ものを選びましょう。間延びしている苗(徒長苗)は、日照不足で育った証拠で、病気にかかりやすいです。
ポイント2: 葉の色と厚み
次は葉っぱです。
- 色: 「濃い緑色」をしていて、厚みがあるものが健康です。全体的に色が薄い、黄色っぽい苗は肥料切れを起こしています。
- 下の葉: 一番下の葉(双葉の上の葉)が枯れていたり、落ちていたりしないかチェックしてください。下の葉が元気なのは、根っこが健康な証拠です。
ポイント3: 虫と病気のチェック(葉の裏)
ここが一番見落としがちなポイントです。必ず葉っぱを裏返して見てください。
- 虫: 小さな緑色の虫(アブラムシ)や、白い粉のような虫(コナジラミ)がついていませんか?これらを家に持ち込むと、あっという間に増殖して他の植物にも被害が出ます。
- 病気: 葉に茶色いシミや、白いカビのようなものがついていないか確認しましょう。
【プロの視点】ポットの「底」と「結合部」を見る

さらに失敗率を下げるために、もう一歩踏み込んだチェックをしてみましょう。
1. ポットの底穴を見る
苗をそっと持ち上げて、ポットの裏側(底の穴)を見てください。
- 白い根が見える: 健全に育っている証拠です。
- 根が茶色い/黒っぽい: 根腐れしている可能性があります。
- ナメクジがいる: 論外です。絶対に避けてください。
2. 初心者は迷わず「接ぎ木苗(つぎきなえ)」
売り場には、同じ品種でも値段が違う2種類の苗が並んでいることがあります。初心者のプランター栽培なら、迷わず値段が高い方の「接ぎ木苗」を選んでください。
- 接ぎ木苗とは: 病気に強い「台木」に、美味しい品種(穂木)をつなぎ合わせた苗です。
- 見分け方: 地際の茎に「プラスチックのクリップ」がついていたり、不自然な「つなぎ目(傷跡)」があったりします。
数百円の差で、トマト栽培の最大の敵である「連作障害」や「青枯病」を回避できる「最強の保険」です。
もし「まだ花が咲いていない苗」しかなかったら?

4月中旬など、時期が早すぎて「良い苗だけど、まだ蕾が小さい」という場合もあるでしょう。 そんな時は、その苗を「買って帰って、植えずに待つ」のが正解です。
すぐにプランターに植え付けず、買ってきたポリポットのまま、日当たりの良いベランダに置いておきます(水やりは毎日必要です)。 そして、一番花が咲き始めてからプランターに植え付けます。
これをすることで、トマトに「実を作るスイッチ」が入るだけでなく、お店の環境から自宅の環境に慣らす(順化させる)ことにもなり、一石二鳥です。
まとめ: 売り場で使える「苗選びチェックリスト」

最後に、ホームセンターの売り場でそのまま使えるチェックリストをまとめました。 この画面をスクリーンショットして、苗選びのお供にしてください!
必須条件
□ 「一番花」が咲いている(または蕾が黄色く大きい)
□ 葉の裏に虫(アブラムシ等)やカビがいない
推奨条件(より良い苗を選ぶために)
□ 茎が「鉛筆くらいの太さ」でガッチリしている
□ 葉と葉の間隔(節間)が詰まっている
□ 葉の色が濃く、下の葉まで元気である
□ ポットの底から「白い根」が見えている
□ 「接ぎ木苗」である(クリップやつなぎ目がある)




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